ウラン採掘、灰の詰まったヒョウタン、広島、長崎、そして、福島を繋ぐもの
まず、ホピの予言を世界に伝えた、ホピ長老たちの言葉から紹介します。
いずれ「灰がびっしり詰まったヒョウタン」が発明される。もしそれが落とされたら、海は煮えたぎり、大地は焼けただれ、生命は何年も育たなくなる。これが起きた時が、真のホピにとって、その教えを広め、第三の最後の出来事が近いうちに起きることを、世界に向けて警告する合図なのだ。もし人びとやリーダーたちが、すぐに行いを改めなければ、すべての生命が滅びるかもしれないのだ。
(ホピ伝統派ニュースレター「Techqua Ikachi」第37号1987年発行より)
ところが、この(ホピの)スピリチュアルセンターであるフォーコーナーズに、私たちの指導者、長老たちの許可を得ずして入った者がいます。彼らはそこに入り、そこを掘り起こし、その中からウラニウムを取り出しました。その取り出されたウラニウムによって、ホピの伝説にある「灰の詰まったヒョウタン」が作られたのです。
(1988年8月8日八ヶ岳いのちの祭り ホピ伝統派通訳詞トーマス・バニヤッカのスピーチより)
先に書いたように、フォーコーナーズエリアとは、ユタ、アリゾナ、ニューメキシコ、コロラドの四つの州が十字に交わる地域を指し、コロラド高原砂漠地帯と重なります。地球のバランスを保つために大切な大地であり、その大地を世話し、守護する者として、偉大なる精霊から植え付けられたのがホピといわれています。
そのフォーコーナーズエリアには、現在、1000ヵ所にも及ぶウラン採掘鉱が残されています。現在、グランドキャニオンのサウスリム、ノースリムから採掘の再開と新規採掘が始まっています。ホピ居留地のすぐそばには、ウラン精錬所跡、ウラン採掘鉱跡があります。ホピやディネの人びとによって崇められる四つの聖山に囲まれるように、ウラン鉱脈が存在しているのです。地図を見比べ、重ね合わせてみてください。
▲左やや下 Cameronにウラン採掘鉱跡が多く示されています。ここから、グランドキャニオン国立公園の東ゲートまで、車で約40分ほどの距離です。この地区では、精錬で出た鉱滓を家の壁などに使われたようです。Tuba Cityから東へ入ると、ホピのモエンコピ村。そこから40マイル(56km)でホピのサードメサです。
モニュメントバレー周辺にもウラン鉱がかたまっています。広瀬隆さんが『ジョン・ウェンはなぜ死んだか』を書かれていますね。
マンハッタン計画で使用されたウランを採掘されたレッドロックは、この地図のちょうど中央からやや上あたりです。Shiprockは被ばくしたナバホが多い街です。
▲世界の観光地グランドキャニオン国立公園。ほとんどの観光客が訪れるのがサウスリム(峡谷の南側)です。そのサウスリムに近い場所からもウランがの採掘が始まっています。この地図では示されていませんが、峡谷の北側(ノースリム)でも採掘がされています。採掘されたウランは赤線のルートでユタ州のホワイトメサ精錬所に運び込まれます。この精錬所には全米からウランが搬入されています。
この赤ラインの途中にKayantaという地名がありますね。ここからモニュメントバレーへと入っていきます。
アメリカ先住民の核被害問題に詳しい豊崎博光氏によると、アメリカの原爆開発(マンハッタン計画)で使用されたウランは次のようになります。
- 旧ベルギー領コンゴ産(現在のコンゴ民主共和国)のシンコローベ鉱山
- カナダの北極圏にあるグレートベア湖のエルドラド鉱山
- 米国アリゾナ州レッドロック鉱山
そして、最終的にテネシー州のプラントで濃縮され、約60kgの濃縮ウランを使って製造された原子爆弾が広島に投下された、と氏はまとめています。(『オルタ』2012年11.12月号 アジア太平洋資料センター発行)
現在、原爆の材料に使用されたウランは、旧ベルギー領コンゴ産とされる向きがありますが、全般に先住民の被曝、核被害への視点が欠けているのではないかと思います。
ホピの言い伝えには、「灰の詰まったヒョウタン」が地上に落とされると、何年もにわたって治らない病気が蔓延するとも言われています。被ばくによる健康被害を示しています。被ばくはウラン採掘から始まり、精錬、加工、実験、核兵器、核廃棄物処理に至る全ての過程、全ての製造に伴い、免れることはできません。大地、水、動植物に至るまで被ばくの影響を及ぼします。
NHKドキュメンタリー番組で、2014年3月15日に放送された映像を見つけました。「ダウンウィンダーズ-アメリカ・被ばく者の闘い-」
おそらく、3.11に合せて制作、放送された番組でしょう。
ネバダ核実験場での核実験は1000回に及びます。その風下に住む人々をダウンウィンダーズと呼びます。番組の中で、映画『ホピの予言』で使用されたシーンも登場するので、ぜひご覧になってみてください。「灰の詰まったヒョウタン」は一瞬の熱線や爆風で殺傷するだけではなく、長く身体を蝕み、世代を超えて遺伝していきます。原子力発電所は、核爆弾、核兵器製造工場であり、福島で同じことが起こっています。
ウランを掘り出してはならない、地中に留めておけ、とはインディアンの言葉。地球進化の過程で必然として生成されたのであり、母なる地球の生命活動になくてはならない内臓器官なのです。他の鉱物も同じく内臓です。
それは、ホピや先住民たちが携え、守ってきたAncient Wisdom古の叡智であり、同時に私たちに還るべき道を示しているのではないでしょうか。
▲『Hopi Prophecy』英語版のナレーターであるトム・ラブランクがオーガナイズした先住民ウラニウムフォーラムのポスター。
Leave Uranium in the Ground ウラニウムは地中に留めておけ
1987年9月26日~10月3日ニューヨークにて開催。
このポスターは宮田さんのコレクション。
私もとても気に入ってます。