グレイト・スピリットの手形
ホピの村は3つのメサの上、あるいはメサの下に位置し、40マイルほど離れたモエンコピ村を入れて、全部で12の村がある。メサとはスペイン語で台地という意味。
これらホピの村全体を上空から俯瞰した航空写真のポスターが手もとにある。真ん中で折れてしまい、少し分かりにくいが、よく見ると人の手形に見えはしないだろうか。対応するような地図も見つけたので、2つをみくらべることができる。
Black Mesa Trust (地下帯水層の保全活動団体)の手形シンボル
そう、伝統を信じるホピは、この地をグレイト・スピリットの承認を得て、ここに定住することになったという。その承認が、台地の地勢に現れた手形で示されている、というのだ。
次の写真は、サードメサのホテヴィラ村火氏族だったマーチン・ゲスリスマ氏が、火氏族に伝わる石板を、1990年ニューメキシコのサンタフェで公開した時に撮影されたもの。向かって右がマーチン・ゲスリスマ、左端が伝統派通訳詞を務めたトーマス・バニヤッカ氏。中央のホピが掲げているのは、公式の場でいつもマーチンが羽織っていたベスト。背中にグレイト・スピリットの承認である手形が押されている。グレイト・スピリットの承認のもと、火氏族に伝わる石板を公開した、という宣誓を意味している。
▲1990年11月20日ニューメキシコ州サンタフェにて、火氏族マーチン・ゲスリスオマ(2015年没)は管理していた石板を公開。
グレイト・スピリットの承認を表す手形がデザインされたベストを、大切なメッセージを伝える公式の場で、いつも着用していた。
左端は伝統派通訳詞だったトーマス・バニヤッカ(1999年没)
以下は、太陽氏族のリーダーだったダン・カチョンバ(1972年没107歳)の言葉
「この土地は、人間がこの地に足を踏み入れるずっとまえからここにあったが、グレイト・スピリットがこの地に住んでいた。その名をマーサウと呼ぼう。
人間はどこかで始まったが、今回はその話はできない。わたしたちは、グレイト・スピリットからお許しをいただけるかどうかをたずねてから、この地にやってきた。わたしたちがマーサウとともにやってきてこの地に落ち着いたのは、マーサウの承認を得たあとだったんだ。
これは、ホピの生活の基礎となるいちばん肝心な原則のひとつだ。わたしたちの土地に何かする前に、グレイト・スピリットの許可と承認を得なければならないということだ。今日もよく覚えておかなければならない原則だ」
グレイト・スピリットの許可と承認を得なければならない。それが教えを信じるホピにとっての大原則だと、ダンは語った。
「わたしたち全員がこの土地に到着した後、マーサウはこの大陸の境界線を見せてくださった。マーサウ自身が人びととそのリーダーの土地と使命を見せてくださった。マーサウは大陸全体におよぶ各グループの境界線を引いてみせた。そして、各グループにはそれぞれのライフ・プラン、崇拝すべき信仰体系、生活方法、食べ物、言語が与えられたということである。
″さあ、生きよ。わたしがおまえたちに与えたライフ・パターンに背を向けるようになったら、道に迷って自分自身の中にトラブルを巻き起こすことになるだろう。この地に広く出てゆく者たち、信義を絶対に失わないように。″
それが今日ここに(みなが)集っている大きな目的のひとつなのだ。この大地の宗教的な人びとをすべてここに呼び集めて、わたしたちホピのメッセージを伝えている理由がそれなのだ。
マーサウの警告にも関わらず、グレイト・スピリットの与えたライフ・プランに人は背を向けているということは、みんな分かっていると思う。だから、事実を明らかにすることが私の願いなのだ。グレイト・スピリットのライフ・プランを明らかにしよう。そして、それをよく胸に刻みこもう。真剣にそれを受けとめて、そのように生きようではないか。」
広げた五本の指のようなメサ、そして、手の甲にあたるブラックメサは、ホピが住みつくことをグレイト・スピリットから許され、そして、ライフ・プランにしたがって世話することを、ホピがグレイト・スピリットと約束した大地なのだ。
フォーコーナーズエリア
コロラド高原、ホピの先祖アナサジの文化圏、4つの聖山
【関連項目】
- ホピの聖地・再考
- ホピの聖地・再考2