花たちに寄せて

母はかつて、ベランダで鉢植えの小さな花たちを育てていた。花の手入れは上手で、見事な牡丹や薔薇を毎年の季節に咲かせた。

ベランダで育てるようになってから、たぶん、節約もあっただろうが、その小さな花たちを仏壇に供えた。
私が宮田さんの病室に出向く時も、いつも、その小さな花たちを瓶に挿して、私に持たせてくれた。だから、宮田さんのベッド脇のテーブルには、小さいながらもお花が絶えることはなかった。

その母は、思いもかけない突然の事故でいきなり亡くなった。
母との最後の会話は、病院へ向かう私に、ベランダで摘んだ花たちを挿した小さな瓶を、玄関先で渡してくれた時、
ありがとう、ありがとう、行ってきます!

その6時間後、医師が臨終を告げた。

あの時、母の顔をしっかり見て言えばよかった。でも、心の中で、世界にひとりだけの存在、母に感謝していた。その時のこと、よく覚えてる。

いま、私はその母に、同じことをしている。ほとけさんにあげるから頂戴ね、と言いながら一輪挿しや瓶に挿して供えている。父や宮田さんや先達のスピリットにも。

ほんとうに愛おしい花たち。
愛おしい人たち。

このところ、スピリットたちのサポートをすごく感じている。

今日は東京行ってくるよ。
もう知ってるか。
よろしくお願いしますね。
いつもありがとう