生命の始まりから浄化の日まで ~ホピ物語~

ホピ物語 ~生命の始まりから浄化の日まで~
ホピ物語 ~生命の始まりから浄化の日まで~

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ダン・カチョンバとは誰か

ダン・カチョンバ
ダン・カチョンバ

 ダン・カチョンバは、先代のホテヴィラ村の指導者である。

 彼は太陽氏族(サンクラン)の人間だった。この人生において、一世紀を超えて長寿を全うし、その生涯に「古代の世界」と「現代の世界」との戦いに立ち会うという特権を与えられた。つまり、古くからの予言がいくつかも実現されていくのを、その眼で彼はしっかりと見てきたのだ。平和に満ちた部落の生活から、前の世界が終わった時以来、ホピが忘れたことのない、あの力による最大の干渉まで、連続して変化していくありとあらゆるスペクトラムを彼は体験した。

 

 1970年1月29日にレコーディングされた話のなかで、ダンは、「平和の人びと(ピース・オブ・ピース)」の物語を語っている。その話は、時間(れきし)の曙に始まり、1986年にホテヴィラ村を拓くきっかけを作った合衆国政府による攻撃まで続いている。世代は変わらないうちにホピの道(ホピ・ウェイ)を、ひいてはアメリカを、さらにはこの世界をもほとんど終わらせかねない勢いの、学校や金、そして警察システムについて、彼は語っているのだ。

 なによりもこの一連の悲劇を起こした者たち、およびその者たちを支えている何百万人もの人びと、さらに、ホピが一体何の目的で外からのその支配に、かくも屈しようとしないのか、その理由すら知ろうとしないために、もう頑張れなくなっている人びと。こういうひとたちにこそ、ぜひなんとしても読んでもらいたくて、彼の話を活字にして出版しようという話が持ちあがった。

 

 ダンはそれをこういう形で本にして出版することは認めてくれたものの、ただしそれは「その本を売ってはならない」という条件がつけられた。「ホピの教えを売ることは、自らの母親を売るに等しい」というのが、彼がずっと言い続けたことだった。


 出版にあたり、彼、ダン・カチョンバ自らがどの部分を活字にするかを取捨選択し、ホピ語から英語への翻訳は正確を極めるため、くれぐれももとの言葉遣いに忠実に、というダンの言葉を受けて、外の世界と彼を繋ぐ個人的な通訳であるところのダナクィムプテワにより慎重に執り行われた。
 コヨーテ氏族(クラン)及び灰色鷲氏族(グレイ・イーグル・クラン)に関する記述は、ダンが後になってどうしても付け加えてほしいと言ったので、このコピー版では中ほどの「オライビ村の創設」の章の最初の部分と、最終章「今日でさえもなお続く分裂」の冒頭部分に挿入されている。


 ダン・カチョンバはその生涯において、さまざまな予言がそのとおりになっていくところを見てきた。しかし彼が見たものはそれだけではなかったのだ。ダンは父親からこう言われていた。「お前はこの時代の一大イベントである『偉大なる浄化の日』の始まりを見るまでは生きるだろう」と。ダンが死んだのは1972年のことだった。(1865年生~1972年没)

 

Thomas Francis Tarbet    

 

注        
FROM THE BEGINNING OF LIFE TO THE DAY OF PURIFICATIN THE HOPI STORY  (邦題:生命の始まりから浄化の日まで ~ホピ物語~)は、1972年カリフォルニア州ロスアンジェルスにて初版が発行された。その冒頭のINTRODUCTIONとして、発行に関わったThomas Francis Tarbetが、ダン・カチョンバについて紹介した。